チビアロ、パパンを探す -PocoAlo cerca padre.-
ある良く晴れた午後。
アロはルッスーリアと町に買い物へ来ていた。
好きなオモチャと本を買ってもらい、アロは上機嫌でルッスーリアを見上げる。
「ありがとぉルッスー」
「どういたしまして」
「ねぇルッスー。どうしていっぱい布を買ったのぉ?」
「アロのお洋服を作るためよ。アロは何色が好き?」
「赤いのがすきー」
「どうして?」
「だって赤はぼしゅのおめめの色だもん」
言われてみれば確かに自分の上司の目の色は赤だ。
良く覚えてたわねとアロを褒めれば、幼子は得意気な顔をする。
「だって赤いおめめはうしゃぎしゃんとおんなじだもん」
……子供の思考回路ってどうなっているんだろう。
あのボスの目を可愛らしい小動物と同じに見ているなんて。
自分の上司が知ったら流石に怒るだろうかと考えながら歩いていれば、
突然手を繋いでいたアロの足が止まる。
どうかしたのかと辺りを見回せば、アロの視線の先には何の変哲もない親子連れがいた。
「アロ?どうかしたの?」
「ねぇルッスー何でアロにはパパンがいないのぉ?」
尋ねられた内容にルッスーリアの目がサングラスの奥で大きくなる。
アロは大きな目を潤ませ今にも泣き出しそうだ。
とりあえず落ち着くように自分に言い聞かせ、膝を折ってルッスーリアはアロと目線を近くする。
「アロ。ママンにアロのパパンはいないって言われたの?」
「アロはね、ぼしゅにパパンって言おうとしたらね、ママンがダメって」
「そうなの?」
「ぼしゅって言わなきゃおこらえゆって。かわりにママンをママンって言っていいよって」
アロの言葉に、この幼子が現れて慌てている同僚を脳裏に思い浮かべる。
パニックになる頭で必死に最低限してはいけない事を教えたのだろう。
その判断は正しいが、結果としてアロには可哀相な事になってしまったのだ。
どうしたものかとルッスーリアは考える。
このまま父親はいないと教えておいてもいいが、
見ていれば上司が父親代わりな事は間違いないのだから、父親だと教えても良さそうだ。
……駄目だった場合は同僚が殴られるだけだろう。
堪えきれなくて涙を零している幼子の涙を拭い、ルッスーリアはニコリと微笑んだ。
「アロ。アロのお父様を教えてあげるわ」
*****
コンコン、と控え目なノックが聞こえる。
入るように促せば小さな顔がひょこりと覗く。
「ぼしゅ」
「どうした。ルッスーリアと出かけたんじゃないのか?」
とてとてと自分に近付いて来た幼子を抱き上げそのまま膝に乗せてやる。
だがいつもははしゃぐのに今日は何故かおとなしい。
紅葉のような手が自分のシャツをしっかりと掴んでいる。
「アロ?」
「……ぼしゅはアロのパパンなの…?」
思いがけない問いに思わず思考が停止する。
自分を見上げる瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいる。
そっと頬に触れれば、猫のように擦り寄られた。
子供特有の高い体温が掌から伝わる。
「アロ。それを誰に言われた?」
「っっ…ごめんなさい!!アロがわるいの。アロがパパン欲しいって言ったのがわるいの!!
だからママンとルッスーをおこらないで!!」
必死になってザンザスにアロは訴える。
だが答えを言ってしまったとは気付いていない。
ぼろぼろと涙を流して自分を見る幼子の頭を大きな手が撫でた。
「…別にかまわない。お前の父親になってやる」
「…?ぼしゅはアロのパパン…?」
「ああ」
その返事にアロは途端に顔を輝かせる。
涙を拭ってやれば、小さな体は自分にきつく抱き付いた。
「えへへっぼしゅはアロのパパンっ」
「…アロ。それは俺と二人の時にだけしか言うな」
「あい!わかったー」
そう良い子の返事をしたアロだが、数日後ついうっかり口を滑らせてしまう。
それを聞いたスクアーロが真っ赤な顔をして固まってしまったというのは、また別の話。
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