チビアロ、おじいちゃんと出会う後編
-PocoAlo incontra un nonno.La parte seconda-
大掃除と見間違うような大捜索が行われているヴァリアー本部に、
ザンザスとスクアーロが帰還したのは10分程前の事。
事情を聞いたザンザスが部下に粘写をするよう言おうとした途端、本邸から連絡が入った。
それによると
『ご子息はお祖父様と一緒におられるので、ご心配には及びません』
という事らしい。
だがそれを聞いたザンザスの機嫌は、急降下の一途を辿るばかりだった。
*****
大理石の敷き詰められた床を、怒気を含ませた靴音で突き進んでいく男。
頼むから流血の惨事だけは避けてくれと思いながら、俺はその背に付いて行く。
突き当たりのドアを開けるというよりは壊す勢いで開いた上司は、
室内の光景に一瞬反応を取れなかったようだ。
それはそうだろう。
部屋の中には色とりどりの風船と、玩具の山。甘ったるい匂いは菓子だろうか。
――いつからボンゴレ9代目の私室は託児所になったんだぁ?
自分の私室の惨状を棚に上げ、呆れた顔で室内を見渡せば、
探していた幼子は宙に舞っている所だった。
「もーいっかい!もーいっかいしてー!!」
「いいぞー。ほら、高いたかーい!」
「きゃぁー!!」
「ギャアー!!」
その光景を見て俺は悲鳴を上げた。
それもそのはず、高すぎるのだ。いくら屋敷の天井が高いとはいえ、
あともう数センチで天井に激突である。
慌てて駆け出し、落ちてきたアロを自分の腕でキャッチする。
「家光ーっ!何しやがんだテメェはぁ!!」
「何って高い高いだろ」
「テメェのは高すぎだぁ!」
「本人は喜んでんだからいいだろう?」
確かに家光の言葉通り俺の腕の中にいるアロは喜んでいる。
もう一度とねだる幼子の髪をくしゃりと撫でて、続きはパパンにしてもらえと微笑む。
それにアロはザンザスを見て、小さな腕を精一杯伸ばした。
「ぼしゅ。ねーたかいたかいしてー」
「……後でな」
部屋の入り口から動けなかったようだが、小さな手に招かれるように足が動いた。
差し出された手が僅かにだが震えているのがわかる。
上司はそれを隠すようにアロを抱き上げた。
「…迷惑をかけた」
「孫が遊びに来て迷惑だと感じる祖父はいないよ」
それはおおよそ親子の会話とはかけ離れたものだったけれど。
それでも二人の間に流れたモノは温かい。
ぽつぽつとだが会話をする二人に、隣の男が鼻をすするので、俺はハンカチを渡した。
昔からこの男は感情を表に出しやすい。
心中で呆れの溜息を吐いていれば、自分を凝視している視線に気づいた。
「…なんだよぉ」
「スクアーロ…お前いい女になったなぁ。奈々には負けるが」
「はぁ!?」
「気遣いが女らしい!テュールの教育の賜物か。それともルッスーリアか?」
「何好き勝手な事ほざいてんだテメェは!」
大体俺は男だこの馬鹿オヤジ、と騒いだ所でここが何処かを思い出す。
慌てて口を押さえるが居たたまれさは拭えない。
これは退席した方が良さそうだと、部屋の主に形ばかりの礼を取り、
ドアへ歩き出せば柔らかい声で名を呼ばれる。
渋々ながらも振り向けば、思いがけない言葉がかけられた。
「息子と…ザンザスと、共にいてくれてありがとう」
ぐらり、と視界が歪む。
それは本当に思いがけない言葉で。
ひりつく喉を叱咤して声を絞り出した。
いいえ違います9代目。俺が無理を言って貴方の息子の傍に置いてもらっているのです。
礼を言われることなど何もありません。
一息にそれだけ喋り、部屋から駆け出した。
恐らく最後は涙声だ。否、最初からだったからかもしれない。
もう、わからなかった。
*****
「ママン…?」
「…泣かせてしまったようだね」
申し訳なさそうな声に、アロが驚いた顔をする。
それに「謝っておいてくれるかい?泣かせるつもりはなかったと」と言われ、
幼子はコクリと頷いた。
さて、あの馬鹿は何処で泣いているのだろうか。
せめて車の中にいて欲しい。でなければ探すのが面倒だ。
そんな事を考えながら何も言わずに踵を返す。
ドアに向かって歩けば、腕の中でアロがゴソゴソと動いている。
「アロ?」
「…おうちかえゆの?」
「ああ」
「じゃあアロ、ノンノにバイバイしゅる」
それに仕方なく床に下ろせば、とてとてと小さな塊が走っていく。
聞こえてきたのは恐らく一般的な祖父と孫の会話。
それがむず痒くて仕方が無い。
暫くして熱の塊に足にしがみつかれ、それを抱き上げれば背にかかる自分の父の声。
問いに直ぐ「わからない」と答えたが考え直し、「気が向いたら来るかもしれない」と言い直した。
ああ、自分が自分ではないようだ。
訳のわからない感情に支配されたが、不思議と不快ではない。
人はこれを、何と呼ぶのだろうか。
*****
数日後、ヴァリアー本部に大量の花と、菓子と、大きな箱が二つ届けられた。
箱の宛先はスクアーロとアロ。
蓋を開けてアロは目を輝かせ、スクアーロは固まった。
アロの箱の中にはフリルやレースを大量に使った服が数着収められており(もちろん女物だ)
スクアーロの箱の中にはシンプルだが高そうなドレスが数着収められていた。
スクアーロがザンザスを見れば、頭を抱えている。
さて、この服は一体どうしたらいいのだろう。
- continuous -
アロが女の子の服見て喜んだのは、綺麗なものが好きだからです。
それにルッスが女の子の服着せてるのも一因です(笑)
Yayoi Jugo