チビアロ、弟ができる -PocoAlo ha un pi? giovane fratello.-
何の変哲もない朝だった。
いつものように恋人より先に目を覚まし、昨日の仕事の残りを仕上げてしまおうと体を起こす。
と、何かがコロリと自分の体の上から転がり落ちた。
大方アロだろうとシーツを捲り、ザンザスは固まった。
そこにいたのはアロとは似ても似つかぬ子供。
黒髪の子供は何度か瞬きをして目を擦ると、ザンザスを見上げて口を開く。
「おはよう。パパン」
次の瞬間、御曹司は声にならない叫び声をあげた。
*****
早朝にも関わらず、ヴァリアー本部のサロンには幹部が集合していた。
ルッスーリアお手製の紅茶を手にしながらベルは不満そうに口を尖らす。
「スクアーロ。俺妹がいいって言ったじゃん」
「知るかぁ!!なんだその俺が悪いみたいな言い方はぁ!」
「スクアーロの頑張りが足りなかったのかと思ってさー」
「う゛ぉおい…」
「それよりその子とアロはどこなの」
ガクリとうなだれたスクアーロを気にも止めず、マーモンは冷静に問い掛ける。
と、その声が聞こえたのかはわからないが、勢い良くサロンのドアが開いた。
「見て見て〜最高傑作よぉ〜」
語尾にハートが付く勢いで室内に入って来たルッスーリア。
その背後にいた小さな二人を見て、室内にいた面々は固まった。
原因は二つある。
話に聞いていたアロの弟(妹でないのは確かだ)があまりにもザンザスにそっくりだった事。
加えて二人が着ている服が、あまりにも手が込んでいる事だ。
アロは赤いベルベット地のワンピース。
白いブラウスの袖や襟は細かいレースがあしらわれており、
髪はワンピースと同じ生地のリボンでツインテールに結われている。
それで花のように微笑むものだから、10人中10人が女の子だと思うに違いない。
一方もう一人の息子は、白いシャツに黒い半ズボン。
短めの柄付きネクタイにサスペンダーを付けられ、戸惑い気味に立っている。
被っている帽子は大きいのか、時折クラクラと揺れていた。
「コンセプトは不思議の国のアリスよ。アロがアリスで、ザン様は帽子屋」
「アリスは青い服じゃないのかよ」
「だってアロが赤が良いって言うんですもの」
「ぼしゅー」
言い合っている二人をよそに、アロはとてとてとザンザスに走り寄る。
しがみついた体を抱き上げてやれば、小さな指は立ち尽くしている子供を指差した。
「ねーぼしゅ。ザンはアロのおとーと?」
「…ああ……」
「わぁい!」
アロは無邪気に喜ぶが、大人達は複雑な表情だ。
当のザンはといえば、まだクラクラ動く帽子が気になるらしい。
見るに見兼ねたレヴィが帽子を外してやれば、それを見上げてザンは微笑む。
「ありがとう」
「!!!?」
「い、今のは空耳!?」
「違うと思うよ」
「お前礼とか言えたのかぁ!?」
外見がザンザス似だから、性格までそうだと思っていた幹部達は、素直に礼を言うザンに驚いた。
礼を言えるのかとスクアーロに詰め寄られ、ザンは戸惑いながらもコクリと頷く。
それを見て思わずその小さな体をスクアーロは抱き締めた。
「偉いなぁお前は!どっかの誰かとは大違いだぁ!」
「えらい…?」
「おう。偉いぜぇ」
微笑んで撫でてやれば、嬉しそうに口元が緩む。
小さな手が伸びてきて、ぎゅうと服を掴まれた。
そしてまだ低くない声で呼ばれる。
「ママン」
こんなに可愛い息子ならいいかもしれない。
このまままともな人間に育てなければと、使命感に燃える。
そんなスクアーロの様子をザンザスは呆れた表情で見ていた。
「ぼしゅ?」
「…弟ができて嬉しいか?」
「うん!」
「じゃあ仲良くするんだぞ」
ザンザスの言葉にアロは良い子の返事を返す。
それをチラリと見て、マーモンは静かに息を吐く。
「……少し面倒な事になりそうだな」
その呟きは誰の耳にも届く事なく空に消えた。
- continuous -
弟、出ました。
名前はザンで、外見はザンザス似です。
これからもアロと一緒に出ますので宜しくお願いします。
Yayoi Jugo