さあ、いきなり結婚しよう -OK, io mi sposer? improvvisamente-
アイツが俺の家に来たのは今から五年前の事だ。
婚約者として呼び寄せたのは良いものの、残念ながら俺はまだ十歳。結婚は当分先になる。
婚約者のスクアーロは可愛いし綺麗だし美人だから悪い虫が付くのが目に見えていた。
だから俺はアイツに山程の贈り物をした。
ガキの俺には女の好みなどわからないから、あちこちの雑誌を読み漁っては流行の物を贈り、
メイドの話を聞いては服を贈り、アイツがテレビや雑誌を見ていて「いいなぁ」と言った物を贈った。
子供の俺にはそんな事でしかアイツをつなぎ止めれないと思っていたからだ。
だけれど贈り物をした日、必ず俺は怒られた。
ブランドの鞄はいらない、服もいらない、ケーキは自分で作るからいい、こんな金の使い方は良くない、と。
初めて言われた日は酷い喧嘩をして、お互い一週間くらい口をきかなった(どうやって仲直りしたかは忘れた)
その後一緒に暮して一年くらいは贈り物をして怒られるという事が続き、二年目の正月にスクアーロは俺に言った。
贈り物は誕生日とクリスマスだけにしよう、と。
俺は嫌だったが、意見して嫌われるのはもっと嫌だったから、素直に頷いた。
その年の誕生日には考えに考えて靴を贈った。
初めてスクアーロは文句を言わずに受け取ってくれたのを覚えている。
そして今年もスクアーロの誕生日が来た。
書類整理の手を止め、買ってからずっと入れてある机の引出しを引く。
小さな箱は丁寧にラッピングされており、銀のリボンがむすんである。
それを見て俺は息を吐き出した。
去年まではアイツが欲しがるだろう物を考えて贈っていた。だけど今年のはそうじゃない。
俺が勝手に選んだ物だ。
スクアーロは成人してますます綺麗になった。
大学は女子校だけど、付き合いで出かけたりしたら、男に目をつけられるのは間違いない。
だから俺はこれをプレゼントに選んだ。スクアーロの為にではない。俺の為にだ。
情けないと、思う。五年前と全く変わっていない。
もう一度溜め息をついて引出しをしまえば、それと同時に部屋のドアが開いた。
「ざーんくーん!仕事してんのかぁ〜?」
「………酔ってんのか」
真っ赤な顔で入って来たスクアーロの手にはワインの瓶とグラス。
フラフラとソファに座ると手酌で飲み始める。コイツがこんなに酔うなんて珍しい。
流石に心配になってそちらへ行けばグラスを差し出された。
「飲めー」
「未成年だ」
「俺の酒が飲めねーのかぁ!?」
真っ赤な顔で睨まれても全然怖くない。だけどその目に涙が浮かんでいる事に気付き、俺はグラスを傾けた。
酒は飲めるがワインはあまり好きではない。
チビチビ飲んでいればスクアーロが肩にもたれてきた。
「酔ったか?」
「酔ってねぇ〜」
「眠いならベッドを使え」
「ここがいい」
肩にすがりついてくる年上の婚約者。
その髪を撫でながら、この調子ならスクアーロの欲しい物が聞けるかもしれないと思い付く。
今あるプレゼントを渡せなかった時の保険だ。
「スクアーロ」
「んー?」
「お前今欲しい物ないか?」
「あーあるぞぉ」
ニコリと笑って彼女は、俺に爆弾を落とした。
「ザンザスの子供が欲しいなぁ」
「…………………………………………は?」
「だってよぉ、お前と俺じゃ婚約者だとおかしいってクラスの奴が言うんだぁ!
だから子供いたらちゃんと夫婦になれるだろぉ?」
涙目で見上げてくるスクアーロに何も言えない。
多分クラスメイトにそんな事を言われたから自棄酒をしたのだろう。この婚約者はどこまで俺を夢中にさせれば気がすむのだろうか。
可愛くて愛しくて仕方がない。
それにこれでも俺は健全な青少年なんだ。好きな相手にそこまで言われて手を出さない方がおかしい。
どうやら引き出しの贈り物は無駄にならずにすみそうだ。
明日の朝それを指にはめてやろうと思いながら、俺はスクアーロを押し倒した。
※小説部屋より
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