シルビア -Silvia-

いつもと同じ朝がどこか違うように感じる。 光が違う。鳥の囀ずりも違う。 自分はこんなに詩的な人間だったかと自問自答し唇を歪めた。 隣を見ればまだ眠っている愛しい婚約者。 綺麗な銀糸を撫でてやれば、小さく呻き声が聞こえて彼女は目を覚ました。 「…おはよう」 「あー…うん…」 それだけ言ってあくびを一つ。 昨日酔っていたせいか、はたまた行為のせいか、スクアーロの声は掠れている。 水を取ってこようとベッドから降りようとすれば、引き留めるように腕を掴まれた。 「どこ、いく…?」 「水持ってくる。喉辛いだろ」 「いらない…」 いらないから隣にいろというスクアーロに自分の頬が赤くなるのがわかる。 年上の婚約者の幼い素直な一面が見れたことを嬉しく思い、俺はベッドに潜り込んだ。 手を握ってやれば微笑んでくれるスクアーロ。 それに俺は昨日渡せなかったプレゼントを今なら渡せそうな気がした。 「スクアーロ、あの…」 「…何か悪かったなぁ」 「…は?」 「俺が襲ったようなもんだよな」 頬を染めて目を反らしながらスクアーロは呟く。 そんな態度をとられて我慢できる筈もなく、俺は婚約者を抱き締めていた。 柔らかい銀糸が素肌に触れ心地よい。 何だか顔を見るのが気恥ずかしくて髪を弄っていれば、軽い音と共に頬にキスが落とされた。 「スクアーロ?」 「なんか…一番高いプレゼントもらったなって」 「俺は物じゃねぇよ!」 「わかってるけどよ」 まだ酒が残っているのかへにゃへにゃ笑うスクアーロに溜息を吐いて俺はサイドテーブルに手を伸ばした。 昨日出番の無かった小箱を取り、婚約者の前で丁寧にラッピングを外す。 箱の蓋を開け出てきたそれを細くて白い右手の薬指にはめてやった。 とりあえずサイズが合っていたことに安堵していれば、婚約者は固まっていた。 「これ…」 「一日遅れたけど俺からのプレゼントだ。外すなよ」 「お、おう」 「……結婚指輪も必ずこの指にはめてやる。だからそれまでこれで我慢しろ」 「……………」 「…後三年だ。待っててくれるか?」 「あ、当たり前だろっ!もう五年も待ったんだから後三年くらいどうってことねぇよ!」 「なら約束だ」 三年後の自分の誕生日に永遠の愛を誓おう。 世界中の幸福を君に捧げよう。 ヴァージンロードの終わりで俺は君を待っているから。 だから、約束だ。 「スクアーロ」 「ん?」 「俺と結婚してください」 最初は驚いた表情で、でも段々赤くなった頬で彼女は小さく頷く。 それが愛しくて、俺はスクアーロの少しかさついた唇にキスをする。 朝日の降り注ぐ中で交わしたそれは酷く神聖に感じた。 今なら世界を敵に回しても勝てる。 そんな気がした。 ※六万ヒット記念より

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