四話-quarta storia-

どうやってここまで来たのかも、俺自身がどういう行動をとったのかもイマイチおぼえていない。 気がつけば髪から雫を垂らして、恋人のデカい服に身を包んでいた。 ***** 初めて入った恋人の部屋はあまりにも殺風景だった。 家具は必要最低限のものしか置いておらず、色もモノトーンで統一されているから冷たい感じを受ける。 そんな部屋の白いラグに座り、俺は恋人に髪を乾かしてもらっていた。 別に頼んだ訳ではない。相手の自主的な行動だ。 ドライヤーの音が静かな室内に響く。 クーラーで適度な温度に保たれた部屋は眠気を誘うには十分で、俺はいつしか船を漕ぎ始めた。 「眠いのか?」 「んぅ〜〜……んん…」 「どっちだ」 「ねむ、くない、ぞぉ…」 流石に初めて訪れた部屋で昼寝をするのは流石にどうかと思い、 なけなしの理性を総動員して眠気を吹き飛ばそうと頑張っている。 だがそんな俺の思いとは裏腹に、恋人はドライヤーのスイッチを切ると俺を膝に乗せた。 そしてそのまま背中をぽんぽんと叩いてくる。 「我慢するな」 「眠くねぇぞぉ〜」 「ったく…」 呆れたように息を吐き出すザンザスの肩にすり寄れば、珍しい物を見たような顔をされる。 それはそうだろう。 俺自身こんな行動をとった自分に驚いている。 どうやら今現在、俺の心と体は別々に行動しているようだ。 「眠いなら寝ろ」 「眠くねぇ」 「ガキかテメェは」 「アンタよりはガキだぁ」 口調は乱暴なのに髪を梳く手つきは酷く優しい。 さっきの知らない男に触られるのは我慢できない程に嫌だったけれど、この手に触られるのは心地よい。 いつから自分は変わってしまったんだろう。 一人で大丈夫だった筈なのに… 「ザンザス…」 「なんだ」 「俺……俺は“俺”でいたいのに、アンタの前だと“女”になっちまう……」 「…………………」 「一人でも大丈夫だった筈で、女が嫌で男なら良かったってずっと思ってたのに……  アンタの前だと…なんか……」 俺はずっと守る立場で、守られるなんて考えた事もなくて。 可愛い物やピンクやレースには興味なかった筈なのに、いつの間にか目で追ってるし。 自分が自分じゃなくなりそうで怖いんだ。 なぁ、どうしたらいい…? そう告げて恋人を見つめれば、今まで見た事がない優しい表情で微笑まれた。 それに顔を赤くすれば、優しく頬を撫でられる。 「俺はお前が好きだから、お前がどう変わろうと気持ちの変化はない」 「っっ…」 「俺の前でだけ女になるならそれでもいい。それだけお前が俺を好きだって事だろ」 ニヤリと笑われて告げられた言葉に、悔しいけれど俺は何も言えなかった。 俺はどうやら本当にこの自己中男が好きでたまらないらしい。 悔しくて頬にキスをすれば、それを皮きりに次々にキスが落ちてくる。 その心地よさに流されて、何故恋人があそこにいたのか聞くのを忘れた。 加えてテーブルの上に置かれた手紙にも、俺は気付けなかった。 あの時気付いていれば、もう少しマシな対応をとれたかもしれないのに…

- continuous -