日常幸福論

「もー嫌だぁ!!」 大声で叫ぶと同時に、スクアーロは座っていたソファに倒れ込む。 その行動に向かい側に座っていたルッスーリアは困ったように息を吐き出した。 「いいわ。少し休憩にしましょ」 「ルッスー…俺ぜってぇ無理だって…できねぇよ…」 銀糸を散らばせたまま、スクアーロは手で顔を覆う。 その綺麗な指には沢山の絆創膏が巻かれていた。 ぐずぐずと彼らしくもない泣き言を聞きながら、ルッスーリアは手早くお茶の用意をする。 茶葉は彼の好きなアッサムだ。 起きなさいと声をかけカップを置けば、のそのそとスクアーロは起き上がる。 そして紅茶を一口飲むと、やっぱり無理だと呟いた。 「そんなことないわよ。ほらもう少しじゃない」 「でもよぉ…ヨレヨレでクタクタだし…」 「大丈夫よ。あの子はきっと喜んでくれるわ」 「……………………」 「それに裁縫をマスターしたなら、ボスの服のボタンが取れた時に  サッと付け直してあげられるし、女としての株もアップよ!」 「俺女じゃねぇし…」 同僚の言葉に言い返し、溜め息をついてカップを置くと、脇に置いておいたものを掴む。 また不器用ながらも針を動かし出したスクアーロを、 ルッスーリアは柔らかい笑みを浮かべながら見ていた。 ***** それからかれこれ二週間後。 サロンでベルとチェスをしていたマーモンにそれは贈られた。 多少不格好ではあるが、紺色の布で作られた帽子。 驚いてマーモンがスクアーロを見上げれば、照れ臭いのか白い頬を赤くしている。 「ほらもうお前のフードボロボロだろぉ?  だから気になっててよぉ…ルッスに教えてもらいながら作ったんだぁ」 下手くそで悪いと謝る彼の指は絆創膏だらけだ。 マーモンはそれを見るなりスクアーロに抱き付いた。 「ありがとうっ!ありがとうママン。大事にするよっ」 「気に入ったかぁ?」 「当たり前だよ!」 「マーモンばっかり狡い。俺にはないのー?」 「ベルちゃんにはアタシからよ」 二人のやり取りを見ていたベルが不満気に口を尖らせば、ルッスーリアが手にしていた物を渡す。 それはジャケットで、手にしたベルは嬉しそうに口元を緩めた。 「ししし。王子のお気に入りじゃん。ルッスこれ直してくれたの?」 「ええ。珍しくベルちゃんが気に入った洋服だもの。少し大きくしたから大丈夫な筈よ」 でもまた直ぐに小さくなるわねと息を吐くルッスーリアに、仕方ないとスクアーロは笑う。 「一番伸びる時期だもんなぁ」 「まーね。見てなよ。スクアーロなんか直ぐに追い越すから」 「僕だって大きくなるよ」 「楽しみにしてるぜぇ」 多分本当にそのうち追い越されるだろう息子達に、スクアーロは微笑みながらキスを送ったのだった。

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アンケートのコメントにありました「新米ママを指導するルッス」を書かせていただきました。 スクアーロは料理上手そうだけど裁縫は無理だろと思ったので裁縫で(笑) 何だか予想よりほのぼのしてしまいました。 いいのか暗殺部隊!?(笑) レヴィとボスが書けなかったので、今度は書きたいです。 アンケートに投票&コメントありがとうございました!!

Yayoi Jugo