君はペットsidX
冷えた空気を室内に入れないよう素早くドアを閉める。
室内には電気がついており、暖かい空気で満たされていた。二週間前まではありえなかった事だ。
「ざんざすーざんざすおかえりー」
「ただいま」
帰宅が玄関の音でわかったのだろう白猫がこちらに駆けて来る。
その体を抱き上げてやれば、冷たいと頬に小さな手をあてられた。
「そと、さむかった?」
「ああ。お前がエアコンつけていてくれて助かった」
「えへへ!」
白猫は嬉しそうに微笑むと腕から飛び降り俺の鞄を持つ。
何か俺の役に立ちたいと言って譲らないのだ。
二週間前行き倒れになっていたコイツを拾ってから、俺の周りは少し賑やかになった気がする。
まあコイツが一人で騒いでいるのだが。
「ざんざす、おふろはいれるぞぉ」
「先にメシにする。今日は魚だ」
「わぁい!」
やはりコイツは猫だからか魚が好きらしい。
手に持っていた惣菜の袋を見せればピョンピョン飛び跳ねた程だ。
「じゅんびするー」
「頼む」
「ざんざす―チンおしえて!」
そういえば今朝電子レンジの使い方を教えると言った気がする。
着替えてから行くと袋を渡し鞄を受け取る。
自室はもう目の前だった。
*****
「わかったか?」
「うん!」
「牛乳飲みたい時は自分でできるな?」
「だいじょぶ!」
そう元気に猫が答えた瞬間、レンジが出来上がりの音を出す。
それを取り出しテーブルに向かえば、猫はもう自分のイスに座っていた。
「ほら」
「いただきます!」
「熱いから気をつけろよ」
念の為と告げたのだが遅かった。
白猫は口を押さえて尻尾を逆立たせている。
慌てて水を飲ませればようやく落ち着いたらしく息を吐き出していた。
全くドジは名を勝手に拝借した奴以上だ。
…ああ、アイツはドジじゃなく馬鹿だったか。
「うにゅう…」
「ゆっくり食べろ、アロ」
「にゅっ!」
こくこく頷く頭を撫でてやればゴロゴロと喉を鳴らす。
コイツは名前を拝借した想い人より素直で可愛い。
アイツもこれほど素直ならば容易く想いを告げられるのだろうか。
そこまで考えて俺は静かに溜め息を吐いたのだった。
- end -